海から吹く風

コラム

四方を海に囲まれた
この国(しま)の誰もが
共有する 遠い海の記憶
遺伝子に刻みこまれた
太古の漁労(狩り)の記憶
海に 熱い南風が吹くいま
全身の細胞がそれを思いだす
 

日本人の魚好きは有名。 どこの国にいっても、さて今夜は何を食べましょうかという段で、シーフードでもいかが?と水を向けられる。 もちろん望むところ。

中でもマニラのフィッシュ・マーケットは圧巻だった。 広大な体育館のような建屋、天井には照明がまぶしく、床はどこまでも白く清潔。 フロア中央にはテーブルが並べられ、見渡したところ5百人は余裕で着席できる。 まわりをぐるっと囲む四方の壁は、細かく区切られた無数の魚屋の店舗。 ここはマーケットの中心部なのだ。

一軒一軒それぞれに専門があり、熱帯魚のようなカラフルな魚ばかりの店、ガラス水槽のなかでのっそりと身動きもできないほど巨大な魚だけ扱う店、もぞもぞと足を動かしているエビの店、水管をダラリと伸ばした巨大な貝だけの店。 見ているだけで実に楽しい。

客は歩き回りながら自分の食欲と、イメージと、予算とに合った食材を見つけ購入する。 ビニール袋をぶら下げて今度はフロアの反対側、大きなカウンターに持ち込んで、その食材をどんな料理にして食べたいか、どんな調味料を使って、どのように調理してほしいかを告げるのだ。 蛍光灯に照らされた、なにやら解剖室のような雰囲気の、奥行きのある巨大なステンレスのカウンター越しに、店員に向かって身振り手振りで説明する客の横顔の何と真剣なこと。

最後に、何番のテーブルに運んでくれと告げて席に戻る客、興奮と期待と満足が混じった実にいい顔をしている。

ヒマワリの種をかじりながらサンミゲールを何本か空けたころ、突如、大皿に乗せられた料理が次々と運び込まれる。 シンガポール風に多量のブラックペパー・ソースをまぶした巨大なカニの炒めもの、中華風の清蒸(チンジョン)にした大皿のガルーパ(石班)、ブツ切りにしてココナッツミルクで煮込んだ伊勢エビ、などなど。 シーフード好きに、ここは竜宮城だ。 ひたすらガツガツと喰ったあと、「もうムリ」と降参状態だった胃袋が、最後の山盛りのマンゴーをスルスルと受け付けるのに自分ながら驚く。

ペスカトーレは南イタリアのパスタ。 ポイントは1)魚介の鮮度、2)加熱しすぎない、そして3)旨味をどう引き出すか、この3点。 手長エビなどの有頭エビは殻ごとタテ半分にカット、背ワタを取り除く。 頭の部分の褐色の「味噌」は決して除かない。 ここが 「旨味ポイント①」

イカは、スルメイカ、ヤリイカなど。 胴の部分は透明な背骨を引き抜き、皮つきのまま輪切りに。 ちなみに、世界中のイカの水揚げの4割は日本人の胃袋におさまるとのこと。 胴から取り出したワタとゲソの部分から茶褐色のワタを分離し、目と口のまわりの固い部分を除去、根元で足を1本ずつばらばらにカット。 ばらした足は、まな板の上で包丁の背でトントンたたいておくといい味がでる 「旨味ポイント②」

切り離したワタの根元(太いほう)をカット、まないたの上で包丁の背でしごいて中身をしぼりだす。 これが貴重な 「旨味ポイント③」 小皿に取っておく。 ホタテの貝柱は大きめの4等分、アサリは貝殻のまま(砂抜きをして)、ムール貝もそのまま。 あとはイタリアンパセリのみじん切りを多めに用意して、下ごしらえは終わり

フライパンは二つ。 ひとつのフライパンにEVオリーブオイルでタマネギのみじん切りをよく炒めたら、トマト水煮をつぶしながら加え、分量が2~3割減るまでかき混ぜながら煮詰め、火からおろしておく。 もうひとつのフライパンでEVオリーブオイル、ニンニクのみじん切りと赤トウガラシを炒め、香りが立ったらアンチョビをヘラでつぶすしながら炒めて風味付け 「旨味ポイント④」

すべての魚介を入れ一気に強火に、ナベをゆすりながら、白ワインをドボドボと豪快に加え、イタリアンパセリ(トッピング用にひとつまみ残しておく)、白胡椒、先ほどのトマトソースを一人分お玉に2杯ほど加えて煮込む。 魚介にはすでに火が入っているので、絶対に加熱し過ぎない。 最後にイカのワタを加えかるく混ぜ、塩で調味してソースは完成。 しつこいが絶対に加熱しすぎないこと。

パスタは細めが合う。 1%の食塩を加えたたっぷりのお湯でゆで上げたら、ソースのナベへ。 火の上で温めながらソースをパスタによく吸収させ、EVオリーブオイルを回しかけたら、残しておいたパセリをトッピングして完成。 余熱でパスタが劣化するので食卓へ急ぐ


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